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<<   作成日時 : 2008/03/26 09:02   >>

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日教組:プリンスホテルを提訴 教研集会会場使用拒否で(毎日jp)3月14日 20時15分

 熱湯浴の私は、日教組の主張や行動にイライラしていましたから、プリンス・ホテルの会場使用拒否を痛快な気分で受け取りました。しかし保守派の方々がホテル側の行いを「義挙」としているブログを読んでいるうちに、次第に違和感を感じるようになりました。何故なら、私には「約束は守らなければならない」という規範があるからです。まぁその規範でどこまで己を律し切れているかは疑問ですが…。

 中には「約束は破る為にある」なんて方がみえるかもしれませんが、しかしほとんどの日本人は私と同じ規範を持っていると思います。そこで、社会秩序を維持する為に必要な規範を逸脱している者に「義挙」とははおかしい、この場合、約束を守り、我慢(保守派からすると)するのが正しい、と書こうとしました。しかし仕事や家庭サービスに忙しく、中々文章を起こす時間が取れず、諦めていました。

 とは言っても、やはり頭の中に残っていたんでしょうね。最近読んだ山本七平氏の「現人神の創作者たち」のことを考えていて、その中に忠臣蔵について書いてある部分があるのですが、フッと、今回の件と忠臣蔵は同じものではないか、と思えてきました。

 随分とニュースの旬を逸してはいますが、今回はそのことを書いてみます。

   ◇

 だいたい私の意見、「今回は我慢すべきだ」というのもヘンですね。だって、我慢の限界を超えたら規範に背いても良いってことですから。これでは任侠映画と同じになってしまいます。

 任侠映画とは、悪者に苛められ、最初は寡黙に我慢していても、限界まできたら爆発して悪者を殺してしまう、そして法によって裁かれて刑務所行きです。それを「カッコイイ〜」と思うのも、忠臣蔵と同じです。赤穂事件の時も、日本中が「義挙だ!」「忠義の者だ!」と肯定し、これに反論する者は、太宰春台の著書からすると、袋叩き(批判の嵐)だったそうです。

 この本では、春台の他にも様々な儒者の見解が取り上げられています。その中で「赤穂浪士は犯罪者」とする見解の代表として、佐藤直方を取り上げています。彼の論は大変に合理的で、儒教の忠義を考慮に入れなくても通用するものです。

 彼の論は非常に簡単で、浅野の行為は違法であり、違法であるがゆえに処刑された、そしてこの処刑そのものを「不法」として非難した者はいない、それなのにその遺志を継承し、未遂の犯罪行為を貫徹しようというのなら、それも無法である、そんな無法者を「義士」などと言えるはずがない、というものです。

 おそらくGHQは直方と同じ様に合理的に解釈し、忠臣蔵をカルト的な単なる復讐として、上演を禁止したのでしょう。

 これを冒頭の記事に当てはめると、プリンス・ホテルは「約束を守らない無法者」となります。保守派の方も、ホテル側が日教組に賠償金や慰謝料を払うのは「仕方が無い」と思っていることでしょう。これは全ての方が、ホテル側は契約違反をしたという認識がある、ということです。

 中には、違約金を払えば済むこととして、他の客への配慮や企業イメージなどを営業面から考え、ホテル側が決めれば良いことだとして、ホテル側を正当化する見方もあります。おそらく「違法だ!」という批判に対する反論なのでしょうが、しかし違法かどうかは別にして、私達の社会秩序を維持する為の規範に反していることは確か出です。やはり威張って言えるこではないでしょう。

   ◇

 我国の歴史では、直方のような考え方は消え、赤穂浪士は忠臣の義士となりました。更に幕府の御用学問だった林家の儒学からは、大学頭林信篤が「復讐論」を著し、赤穂浪士を忠臣義士として幕府のお墨付きまで与えました。

 信篤の論は二筋論で、主君の遺志を継ぎ、仇を討つことは忠義である、しかし天下には法があり、法を犯す者は罰し、国家の典を明らかにしなければならない、二つの義が平行して行われことになるが、それは道理に反することではない、上の者は法を明らかにし、下の者は忠義に励み、それで憤ることがあれば志を遂げれば良い、法によって裁かれるからと言って、彼等が不平を言うはずがない、ということのようです。

 私を含め、日教組に反感を持つ保守派の者からすると、日教組に協力することは「不義」であり、協力しないことは「義」です。だからホテル側が規範を破り、その為に違約金を払うことは当然だけれど、それでも義を断行したのは賞賛に値する、となるのだと思います。やはり信篤と同じ二筋論です。

   ◇

 普段の裁判では対立する権利(正義)、例えば「知る権利」と「プライバシー権」の対立などを調整し、正義を一本化するようにしています。しかし仁侠映画を観て「カッコイイ!」と思う文化もあります。

 山本氏によると、尊王の志士達も、5.15事件も2.26事件もこのパターンに当てはまり、特に5.15事件の時などは、「動機は純粋だった」として助命嘆願運動が起き、国民は心情的に同情してしまっている、これはイデオロギーに対する日本人の一側面であろう、としています。

 ひょっとしたらもうお気付きの方もみえるかもしれませんが、仁侠映画を観て「カッコイイ!」と思うこの二筋論は、世界的に見ればテロの思想に近いように見えます。ただ、テロの場合は天下の法(政治体制や政権、或いは法律など)を変えて自分達の正義と一致させようとするのに対して、忠臣蔵では天下の法を変える意図はなく、自分達の正義を貫き、それが天下の法によって裁かれても、それを当然としています。

 そのような違いがあるのではないかと思い、山本氏の言う、尊王の志士や5.15事件、2.26事件とは違うのではないか、という気がします。ただ、「動機は純粋だった」として同情してしまう国民には、忠臣蔵のパターンが当てはまるかもしれませんが…。

   ◇

 最近、シー・シェパードにより我国の調査捕鯨が妨害されました。豪州でのTVインタビューで、「海賊行為として訴えられるかもしれませんよ」という質問に対して彼等は、「良い事をしているのに何で罪になるんだ?」という趣旨のことを述べていました。

 忠臣蔵でないことは当然ですが、彼等は合法的に鯨を助けていると思っており、これは自分達の正義と天下の法は一致していると思っている、ということで、これまた当事者としては当然なのでしょうが、自分達の行いをテロとは思っていません。

 しかし我国で環境問題に熱心な方の中には、ひょっとしたら「彼等の行動は不当だが、動機は純粋だ」として賞賛している方がみえるかもしれません。我国には忠臣蔵の伝統がありますから、そういう方がおられても不思議ではありません。

   ◇

 では何故こうなるのでしょう。

 山本氏のこの本の忠臣蔵の部分では、「空気」という言葉が何気なく使われていました。

 「主君の遺志を継ぐ」という言葉から、或いはその頃の儒者達の見解から、心情的に主君と一体化することが「忠義」という意味になっているのではないか、とも推察しています。これは「感情移入」で自他の区別がなくなるということを連想させ、何だか山本氏自身の著書「『空気』の研究」が念頭にあるのかもしれません。

 まだ理解が浅く、私なりの(知識の範囲内での)整合性のとれた考えとしてまとまっていませんので、何とも言えませんが…。

 結局のところ、私には「何故こうなるのか」に対する答えは見つかっていません。

   ◇

 何だか書いていてグチャグチャになってきましたが、とりあえず、意見が対立した時などは、少し落ち着いて、自分や相手の意見に似た歴史的事件などを連想し、関連付けてみるのも面白いかもしれません。それが合っているか間違っているかは別にして、凄く客観的になれるのは確かだと思います。

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
TBありがとうございます。実は、時々、記事読ませていただいています。ただ、「規範」は一枚岩ではなく、かなり異質なものが体系をなして「ピラミッド」構造をなしていると私は理解しており、結論は180度ことなりますが、貴記事の基本的な考え方には共感を覚えます。今後ともよろしくお願いいたします。
KABU
URL
2008/03/26 12:38
おはようございます、KABUさん。わざわざコメントを頂き、ありがとうございます。
KABUさんのブログは更新の度に拝読しております。逆にKABUさんに訪問して頂いていたとは、たいへん光栄です。
「規範」につきましては、私もピラミッド構造を想像しています。でも、KABUさんとは違うようですね。忠臣蔵のパターンも、私としては日本人の「自然観」から起きているのではないかと、ナ〜ンとなくですが、そんな気がしています。
もう少しまとまったら記事にしてみます。
カァ
2008/03/27 07:42

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